| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T17-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
鳥類は生物多様性の指標生物として有効であり,その多様性を広域的に評価することは熱帯林保全およびその管理計画を立てるうえで重要である.鳥類の多様性調査では,ポイントカウント法などの直接観察が一般的に行われる.しかし,インドネシアの林業コンセッションにおける我々の研究から,調査者の同定能力の違いに結果が大きく左右されることと,事後の検証可能なデータとして扱えないなどの問題点があることが明らかになった.それを予防するためには,複数の調査者の参加や十分な反復調査が必須となり多大な労力がかかる.しかしながらインドネシアの熱帯多雨林では高い同定スキルを持った調査者が不足しており,広域にわたる長期的なモニタリングは事実上困難である.近年,野外における音声録音や解析の技術的な進歩により,野外で録音した音声から生物多様性評価を行う試みも始まった.音声を用いるメリットは,同時に複数の地点において長期的にデータを取得することが容易である点,データの保存や検証が可能であり客観的なデータとして扱える点などが挙げられる.しかし,大量の音声データを耳で同定することは極めて難しく,同定能力の違いも影響するため,機械的に鳥類種を識別するシステムの開発が必要になる.我々は,このシステムの開発に向けたステップのひとつとして,チメドリ科の鳥類のさえずりを機械的に識別する試みを行った.また音声録音法をポイントカウント法と比較し,鳥類多様性の評価における音声録音法の有効性について議論する