| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-100 (Poster presentation)

ヤマトシロアリの初期コロニ―におけるコロニー間相互作用

*矢吹健太,北出理(茨城大・理)

シロアリのコロニーは通常、雌雄の有翅虫によって創設される。ヤマトシロアリでは朽木の樹皮下などに有翅虫が営巣するが、好適な営巣場所は限られるため、初期コロニー同士は近接して分布する。したがって、コロニーの成長とともに他のコロニーと接触する機会が増加する。初期コロニー同士が接触した際に、コロニー間で闘争や融合、乗っ取りが起こる場合があり、カンモンシロアリではコロニー発達段階の違いによって、初期コロニー間の相互作用が異なることがわかっている(宮田 未発表)。コロニー間の闘争においては個体数の多いコロニーほど有利であるため、発達初期のコロニーにおける融合の利益は大きい。一方でコロニー融合に伴う複数の女王による繁殖はコロニー内血縁度の低下をもたらす。

本研究では、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)における、コロニー間相互作用の要因について調べるため、発達段階の異なる初期コロニーを想定した3つの型(生殖虫ペアのみ、ワーカーあり、ソルジャーあり)を作成し、母巣が異なる同じ型同士を組み合わせた。さらに母巣の影響を調べるため、母巣が同じコロニー同士の組み合わせを生殖虫ペアのみの型について行った。

その結果、母巣の違いは母巣が同じコロニー同士の場合はすべて融合し、異なるもの同士の場合は融合せず、若干の闘争が生じる結果となった。また融合したコロニーの多くで生殖虫数の減少が確認された。一方、発達段階の違いによってコロニー間の融合や闘争の有無に変化は見られなかったが、ワーカーやソルジャーの出現に伴い生殖虫の闘争による損傷は減少した。母巣の違いによる明確な反応の変化は、ヤマトシロアリが血縁識別を行っていることを示している。これらの結果をふまえ初期コロニー間相互作用に変化をもたらす要因とその適応的意義について考察する。


日本生態学会