| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-117 (Poster presentation)

他種の鳴き声によって行動を変えるトノサマガエル

*福元修斗(九大・シス生・生態研),吉村友里(九大・シス生・生態研),粕谷英一(九大・理・生物)

シグナルを介した情報伝達では、本来の受信者以外の第三者がシグナルから情報を得て利用する盗聴(eavesdropping)がしばしば起きる。水田を生息域とするカエルでは複数種が密集しており、他種の鳴き声を聞く機会も多いため、カエルが他種のカエルの鳴き声を情報として利用していることが十分考えられる。しかし、カエルの他種のカエルの鳴き声を聞いたときの行動を調べた研究は無く(種間の生殖隔離を除く)、他種のカエルの鳴き声にどのように反応するのかはわかっていない。そこで、トノサマガエルにツチガエルの鳴き声およびヌマガエルの鳴き声を聞かせて反応を調べる実験を行なった。ツチガエルはヌマガエルよりもシマヘビからの捕食を回避できるため、この捕食者に対する防御の違いによって、鳴き声に対する反応に違いがあることが予想された。

実験の結果、トノサマガエルはツチガエルの鳴き声には、鳴き声が再生している間は音源から離れ、再生が止まると音源に近づくことがわかった。また、ヌマガエルの鳴き声には、鳴き声の再生が止まると音源に近づくことがわかった。さらに音源への近づき方には、ツチガエルの鳴き声とヌマガエルの鳴き声では差があった。このことからトノサマガエルは他種の鳴き声に反応して行動を変え、種の違いにより、鳴き声に対する行動の変化の仕方が異なることが明らかになった。


日本生態学会