| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-119 (Poster presentation)

海鳥のダイナミックソアリングのスケーリング則

*米原善成,佐藤克文(東大大海研)

大型のミズナギドリ目の海鳥は、蛇行して飛ぶことで風からエネルギーを獲得し、羽ばたきに要するエネルギーを減らすダイナミックソアリングと呼ばれる独特の方法によって飛行している。これまで、この省エネルギーな飛行方法について、いかに風からのエネルギー獲得量を最大化するかという点に着目した理論研究が行われてきた。しかし、実際に野生下でダイナミックソアリングする鳥の詳細な動きを測定して理論を検証した例は少ない。本研究では、ダイナミックソアリングをする海鳥の1種であるオオミズナギドリ Calonectris leucomelas (0.5㎏)の動きを、移動に要するエネルギーコストを最小にする飛び方という観点から検証する目的で、岩手県船越大島の繁殖地において、オオミズナギドリに加速度を20Hzで記録する加速度計と位置情報を1秒間隔で記録するGPS記録計を同時に装着し、羽ばたき運動と飛行経路を記録した。

得られた加速度データから飛行中の羽ばたき時間割合を算出した。また、GPSにより記録された飛行経路からオオミズナギドリが目的地に達するまでの時間を算出した。これらの値をもとに、オオミズナギドリが目的地に達するまでのエネルギー消費量を見積もった。さらに、エネルギー消費量と飛行経路の蛇行の度合いとの関係を調べた。その結果、目的地までに要するエネルギー量が最小となるような蛇行の度合いを持つ飛行経路があり、これは従来の理論研究から導かれていた風からのエネルギー獲得量を最大化する飛行経路よりも直線的であった。このことから、オオミズナギドリは風からのエネルギー獲得量を最大化するのではなく、目的地に達するまでのエネルギー消費量を最小化するように飛んでいると考えられる。


日本生態学会