| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T02-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

炭素貯留の場としての森林:炭素貯留のために森林施業ができること

米田健(鹿子島大・農)

自然林を対象とした択伐林においては、「木材生産活動」と「生物多様性保全」は必ずしも相反的関係にあるのではなく、むしろ互恵的側面が強い。それは、持続的な木材生産にとって生態系の主役である生物群集の保全という関連からだけでなく、森林と一体的関係にある地域環境の保全という視点からである。さらに、いま生産林が大気中のCO2濃度(地球環境)に与える影響を考慮した管理法が求められている。本発表では、択伐林生態系さらに木材消費地を含めた生態系での炭素代謝特性から、その持続的管理法の在り方を論じる。択伐林の価値を木材生産力(WP)と環境機能力の和として評価した場合、両者間の重みづけで評価値は異なる。しかし、その重みづけの係数(k)が地域環境(LE)と地球環境(GE)で変わらないとすれば(k=LE/WP=GE/WP)、純生産速度(NPP)と伐採残渣(CWD)の分解率が伐採前後で変化しない条件下では、森林の価値が重みづけに左右されない伐採率(平衡伐採率)が1つ存在する。平衡伐採率で管理された択伐林生態系は、バイオマスとネクロマス(CWD)の二つのプールに合わせて貯蔵された伐期を通じの平均貯蔵量が成熟林の65%、最大木材生産管理下で大気へ放出されるCO2の65%である。これらは、その森林管理理の目安になる。伐採率が高ければそれを補完するだけの伐期の長期化が必要となる。残存林冠木の枯死率の影響も含めて論じる。森林の劣化、さらに土壌によりNPPさらに分解特性が変化する。これら両パラメータの変化に伴う森林+消費地生態系の炭素代謝特性のレスポンスについても論じる。択伐林の管理法の一つの指針として、森林が持つ環境保全機能と木材生産機能それぞれの最大値に対する達成率を同じとして求めた平衡伐採率を提起する。


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