| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T02-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
生物多様性セーフガードが様々な主体から提案されつつあるが、これらのほとんどは生物多様性セーフガードの原理・原則を示すにとどまっている。こうした定性的な原理・原則だけでは生物多様性保全には不十分で、かえって生物多様性の劣化を進めてしまう危険性さえある。生物多様性の保護を効果的に図るためには、こうした原理・原則を超えた、具体的かつ定量的な生物多様性セーフガードの指標も必要である。そこで我々は マレーシアの生産林において、生産林における定量的な生物多様性セーフガード指標づくりを目指し、伐採が生物多様性に与える影響を調査した。生産林において生物に対して最も強い影響を与える要因は、林内に作られる伐採林道網(林道、搬出道、山土場)だと言われている。そこで本研究においても、伐採林道が生物多様性へ与える影響に着目して研究を進めた。すると伐採林道は、調査対象としたフン虫と小型哺乳類の動物相どちらに対しても大きな影響を与えていることが明らかにされた;伐採林道周辺のフン虫および小型哺乳類の種組成は、森林内のそれとは大きく異なっていたのである。さらに、林道周辺のフン虫によるフンの分解や種子の二次散布は、森林内に比べずっと低いことも明らかになった。すなわち林道は生物多様性を劣化させるだけでなく、それらが担う生態学的機能さえも劣化させるのである。以上から、林道密度をできるだけ小さくすることが熱帯生産林における生物多様性セーフガード指標になることが分かった。加えて言えば、林道密度はリモートセンシング技術により広域に、かつ簡単に定量することができるので、林道密度を生物多様性セーフガード指標に用いた場合、その履行を担保するために必要なMRVも確保することが可能である。