| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T03-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
独立栄養を営むはずの植物の中には、菌類や他の植物から糖を含むすべての養分を略奪するという特異な進化を遂げた絶対従属栄養植物が存在する。これらの植物は、緑葉を持たないその奇異な形態から人々の関心を集めてきたが、その研究のほとんどが、宿主の報告にとどまっているのが現状である。しかしながら、従属栄養植物の進化を理解するためには、宿主・植物との相互作用だけにとどまらず、生活史全般において、どのような適応を遂げているかを知る必要がある。例えば、大半の従属栄養植物は虫媒の植物から起源しているが、それらの生育場所は薄暗い林床であり、ハナバチなどの訪花性昆虫のにぎわいとは無縁の世界である。このような環境に生育する従属栄養植物は、薄暗い林床で受粉を達成しなければならない。
そこで実際に従属栄養植物の送粉様式を調査したところ、多くの種類が昆虫に受粉を頼らずにすむ自動自家受粉を採用していた。こうした自殖の進化は暗い林床で確実に繁殖するのに役立ったと考えられる。しかし、暗い環境に進出可能な昆虫を送粉者として利用することができれば、暗い林床でも他殖を行うことが可能かもしれない。このような例として、我々は、菌食ショウジョウバエ媒の菌従属栄養植物(クロヤツシロラン)を発見した。この植物は、落葉腐朽菌に寄生しているだけでなく、その腐朽菌の子実体は、送粉者の餌であると同時に、送粉者を花に誘引するのを助ける媒体としても機能していた。これらの知見をもとに、従属栄養植物が、生育環境の悪条件(暗い林床)をいかに乗り越えて外交配を達成しているかを議論したい。