| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T03-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
ネジレバネは昆虫の寄生者でオスの成虫は自由生活だが、メスは終生寄生性であり、メス成虫は頭部を寄主の体外に出し、そこで交尾し微小な幼虫を放出する。ハナバチに寄生するネジレバネは花を介した便乗に特化している。雌のネジレバネに寄生されたハナバチは花の上で微小な1齢幼虫を放出する。花の上で放出されたネジレバネの1齢幼虫は別のハチに便乗して巣まで運ばれ、そこでハチの卵や幼虫に寄生する。しかしながら、これまで知られている訪花行動では寄生されたハチは花の上で採餌と幼虫放出行動の両方を行っていたため、寄生されたハナバチによる訪花を明確な宿主操作として区別することができなかった。ネジレバネによる宿主の訪花行動の操作を検出するために、本研究では寄生されたハナバチの変化と訪花植物の送粉者への報酬に注目し、調査を行った。ネジレバネに寄生されたハナバチは生殖能力を失い営巣しなくなるため、幼虫の餌として花粉を集める必要がなくなり花粉に対する需要が変化する。またエゾアジサイはハナバチを中心に様々な昆虫が訪花するが、花粉のみを送粉者への報酬として提供しており、蜜を出さない。花蜜と花粉を出すトリアシショウマと、花粉のみを出すエゾアジサイが同時期に同所的に開花している場所で、どちらの花にも頻繁に訪花し、かつネジレバネの寄生がみられたニジイロコハナバチに特に注目し、2010年から2013年の7月に長野県小谷村周辺で調査を行った。ネジレバネに寄生されたハナバチは通常のハナバチと同様にエゾアジサイの花に訪花するが、花の上での行動は変化しており、寄生されたハチは花の上で採餌も集粉も行なわずネジレバネの1齢幼虫を放出するような行動を行なっていた。