| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T03-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
いくつかの寄生生物は宿主の行動を変化させる。宿主の行動変化は、宿主と他の生物個体の関係に影響を及ぼす可能性がある。この影響を調べることは、寄生生物が群集に与える影響を理解する上で重要である。しかし、宿主操作が宿主以外の生物に及ぼす影響については、わずかな例を除き、ほとんど調べられていない。
本発表では、マルハナバタマセンチュウによるマルハナバチ女王の宿主操作が、間接効果を通じて、非宿主である働きバチの採餌に及ぼす影響について調査した結果を報告し、宿主操作が送粉系に与える影響について議論する。
マルハナバチタマセンチュウは、マルハナバチの女王を不妊化させる寄生虫である。感染女王は営巣せず、夏まで採餌を続ける。間接的な証拠から、感染女王は移動分散しなくなることも示唆されている。地域のマルハナバチコロニーの数が感染によって減少しない場合、この宿主操作は、女王を余分な訪花者として夏まで存在させることになり、他の訪花者との花資源競合を引き起こす可能性がある。
演者らが調査を行った地域(北海道上川郡のセイヨウオオマルハナバチが優占する農村)では、夏に毎年繰り返し感染女王が多くみられる場所があり、そこではアカツメクサの残存蜜量が少なく、働きバチによるアカツメクサでの盗蜜訪花が多く、働きバチの体サイズが小さかった。この場所から女王を除去すると、アカツメクサの残存蜜量が増え、働きバチのアカツメクサへの訪花が増加した。
これらの結果は、タマセンチュウによる宿主操作が、花資源を巡る競争を激しくし、働きバチの体サイズや採餌行動に影響したことを示している。マルハナバチの生態学的重要性を鑑みると、この宿主操作が群集に及ぼす影響は大きいのではないだろうか。