| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T04-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

花粉一粒分析を用いた植物生態学的研究

*阿部晴恵(新潟大・農), 陶山佳久(東北大・農)

花粉一粒分析の手法の基礎は、Suyama et al. (1996)によって開発後、現在では核DNAの複数遺伝子座を対象とした大量サンプルの短時間解析が実用化され、多くの研究が汎用的に行われるようになった。また、花粉粒を利用してハプロタイプを得ることにより、自然選択の検出、祖先の推定、連鎖不平衡解析などが大きく促進されることが期待されている。本手法を用いた研究では、特に送粉系に関わる研究が多く発表されており、風媒、動物媒の植物について、送粉・受粉成功における送粉者の貢献度が評価されている。このため本講演では、まず花粉一粒での分析方法とその有用性に関する紹介を行い、さらに本手法を用いた送粉系研究のレビューをすることで、植物の繁殖成功に至る一連の過程における送粉者の貢献度について考察する。

例えば昆虫媒のホオノキでは、飛翔能力が高いと言われるマルハナバチは付着花粉粒の量は多いものの自家花粉を多く運んでおり、散布距離も短かった。一方、ハナムグリ類が運ぶ花粉は、他家花粉の割合が高く散布距離も長い、つまりハナムグリ類の方が送粉系での貢献度が高いことが明らかになっている(Matsuki et al. 2011他)。鳥類の場合は、演者らが噴火後の三宅島においてヤブツバキの送粉者付着から結実段階における花粉親組成を推定したところ、高被害地で訪花頻度が高かったメジロの付着花粉は、他の鳥類よりも遺伝的多様性が高い傾向があることが明らかになっており、結実段階でも、高被害地での遺伝的多様性が高く、推定送粉距離も長い傾向があった。この研究は、自然攪乱下での鳥類による送粉システムの耐性を詳細に示す結果でもある。このように、送粉者の行動だけではなく、繁殖成功につながる送粉貢献度を対応させることは重要であり、今後このような研究が増えることで、花粉媒介生物の貢献度の一般的な傾向が明らかになるだろう。


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