| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T04-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
原生生物は,体サイズが100〜数マイクロメートルの単細胞性の真核生物である。微細藻類あるいは原生動物ともよばれている.近年,原生生物の分子系統関係と,微細形態観察,代謝経路の解明等の情報に基づいて,真核生物の体系が提案された(Adl et al, 2005; Adl et al, 2012).同提案は,原生生物だけではなく,真核生物全体を包括する体系であり,この体系では,従来のいわゆる界(kingdom)という分類カテゴリーでは説明出来ないため,super-groupなどのカテゴリーを用いる点で特徴的である(島野, 2010など).
一方,生態系内において,原生生物は生産者,あるいは分解者として重要な機能を担っている.具体的な役割として,微生物ループや家畜のルーメン原虫として農業生産への寄与が挙げられる.また,殻を形成する原生生物である放散虫や有孔虫の化石群集は,過去の環境推定に用いられている.
ところが,ほとんどの自由生活性の原生生物は難培養性である.様々な分類群が所属している原生生物の機能や多様性を捉えるためには,野外から採集したバルク試料から,目的の微小な原生生物1個体を顕微鏡下で単離,形態を撮影し,その個体から塩基配列情報を得るOne Cell PCRの手法が必要であり,繊毛虫類の事例に基づいて紹介する(Shimano et al, 2008; Shimano, 2009).あわせて,One Cell PCRに基づいた渦鞭毛藻類の事例(Takano and Hriguchi, 2006)あるいは,放散虫類の系統解析(Decelle et al, 2012)等,様々な原生生物の分類群での事例を,初期の驚くべきテクニックから,最新の技術による方法までを示す.本法によって原生生物の多様性がどの様に捉えられるのかを紹介する.