| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T06-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
2011年3月の福島原発事故により、現在もなお周辺の森林域の林床に放射性物質が存在するが、詳細な空間分布パターンについては未解明の点が多い。そこで本研究では、1)常緑針葉樹と落葉広葉樹の樹冠下で土壌放射性セシウム量がどのように異なるか、2)土壌放射性セシウム量の分布が、斜面角度と樹幹の位置によってどのように影響を受けるかを明らかにする目的で以下の調査を行った。
調査は2013年8月に福島県内のモミ(Abies firma)と落葉広葉樹に混生する二次林6か所を対象とした。各調査地において、モミと落葉広葉樹2 – 8本の樹冠下でリターサンプルと土壌サンプル(0 – 5, 5 – 10 cm)を採取した。各樹冠下では4か所 (斜面に対して上側、下側、両脇)でサンプルを採取し、斜面角度も記録した。リター及び土壌サンプルは乾燥後、ゲルマニウム半導体検出器を用いて放射性セシウム量を測定した。
その結果、リター層の放射性セシウムは、全体(リター層-土壌10 cmまで)の8割以上を占めており、リター層から土壌5 cmまでには約9割以上が存在していることがわかった。またモミの樹冠下の土壌放射性セシウム量は、樹冠外のセシウム量と明瞭な差がないことがわかった。傾斜が緩やかな場合(10 – 25度)、土壌表層(0 – 5 cm)では、樹幹を挟んで斜面上側で放射性セシウム濃度が高かった。それに対して傾斜角度が25度以上の斜面では、斜面下側の土壌に放射性セシウムが多く含まれることがわかった。リター層と土壌下層(5 – 10 cm)では、斜面角度に関連した空間分布傾向が確認されなかった。以上の結果から、林床の放射性セシウムは、大気からの降下後に斜面に沿って移動している可能性が示唆された。