| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T07-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
イネシンガレセンチュウAphelenchoides besseyi Christie(以下、線虫)はイネの外部寄生者である。この線虫は種子伝搬性であり,線虫はイネの花に入り、急速に増殖する。種子の乾燥とともに、無水状態で休眠する。感染種子が水に浸漬されると線虫は再生して種子から離れ、イネに侵入する。線虫個体群の特性を明らかにするため、一粒の種子から線虫を分離するHoshino & Togashi法(1999)と100粒の種子から分離する方法(Hoshino & Togashi,2000)を開発した。
「ほたるいもち」発生レベルの異なる12の圃場から小穂を採取した。種子あたりの平均密度と平均込み合い度の解析によって,線虫の集中分布パターンが示された。圃場の「ほたるいもち」発生レベルが高くなると,水稲種子の平均充実度は低下し,種子当たりの平均線虫数が増加することが明らかになった。種子単位でみると,種子内の寄生線虫数の増加とともに,平均種子充実度が増加し,種子内の線虫の密度逆依存的死亡を認めることができた。
線虫の接種実験によって,水に浮く軽い比重の種子(比重1.00未満)比率は,線虫未接種のイネの種子より接種イネの種子が高かった。線虫の死亡率は,高い比重の種子(比重1.13以上)より小さい比重の種子が高かった。小さい比重の種子の場合、種子内線虫数の増加とともに種子充実度が減少した。それに対して、中間的な比重の種子(比重1.00~1.13)と高い比重の種子では,種子内線虫数が増加しても種子充実度は一定であった。小さい比重の種子は高い比重の種子よりも発芽割合は小さく、根が出るまでの時間は長くなった。イネ種子の比重を通しての種子の分散能力と競争能力の間のトレードオフとともに,イネ種子による線虫の分散と繁殖の間にもトレードオフがあることが示された。