| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T09-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

やんばる東村高江の自然と米軍ヘリパッド建設計画

宮城秋乃(日本鱗翅学会自然保護委員会)

2006年、日本政府は高江の森林内にオスプレイも使用する直径75mの米軍用ヘリパッドを6カ所建設すると発表。2013年に一つ目が完成。2014年1月現在、二つ目を建設中である。

日本全面積の0.1%もないやんばるに1000種以上の高等植物(全国の27%)が自生し、5000種以上の動物(単位面積当たり本土の51倍)が生息。沖縄防衛局の「環境影響評価書」では環境への影響を回避・低減し、保全借置をすることによって環境保全上特に問題ないとしている。同局の「環境影響評価書」によれば、ヘリパッド建設予定地とその周辺で、4158種の野生生物種が記録されている。そのうち12種の植物、11種の動物が沖縄島北部のみに生息する固有種・固有亜種であり、絶滅のおそれのある種が177(環境省レッドリスト)、188種(沖縄県レッドリスト)含まれている。天然記念物の生物は、国指定、県指定それぞれ8種が記録されている。むしろ、同局の環境現状調査からはヘリパッドの建設と軍用機による訓練は自然環境と野生動物へ極めて大きい影響を及ぼすと予測される。

建設はこの森の動植物の生息地に多大なダメージを与える。オスプレイは離着陸時に激しい爆音・爆風があり下に向けて噴射される高熱の排気(最高約217度)もあり、アメリカでは火災事故が起きている。ハワイではオスプレイの騒音や高温の下降気流が希少生物の生息環境に悪影響を与えることが認められ訓練計画を中止している。本計画の対象地域は林齢50年以上の森林が集中するためヤンバルテナガコガネ、ノグチゲラなど大木への依存度の強い生物種の絶滅を促進する。計画されている工事が影響を及ぼすと考えられる福地川、新川川、宇喜川流域には水系に強く依存する動物、渓流沿いにのみ生息する植物の固有種・絶滅危惧種が集中して分布している。工事にともなう赤土の河川への流出により、これらの動植物の絶滅が促進される恐れがある。


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