| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T10-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
宿主の母から娘へ垂直感染する細胞内共生細菌では、宿主のオスを死亡させることによって自らの感染効率を高めるものが知られている。宿主の性的相互作用を考慮しないモデルでは、細菌の感染が宿主集団にすばやく広まることが予測されている。しかし、現実には感染は一部の種類に低頻度で見られるだけである。私は宿主オスの抵抗性、すなわち少数派の性が有利となる性比選択を考慮することによって感染動態を正しく理解できると考えた。
本研究では、テントウムシ近縁2種において細胞内共生細菌の感染率を調べた。質のよい資源を利用するジェネラリストのナミテントウでは、ほとんどの個体が感染していなかった。その一方、捕まえにくいアブラムシを利用するスペシャリストのクリサキテントウでは、約半数の個体が感染していた。クリサキテントウの感染系統では、孵化したメス幼虫が死んだオスの卵を食べることによってアブラムシに対する捕食効率を大幅にあげることができる。これらのパターンは、感染の利益が大きいクリサキテントウでのみ感染率が高くなることを示唆している。裏を返せば、通常の種類の宿主では性比選択の効果が優先され、寄生者による性比の歪みは抑えられているといえるだろう。以上の状況をもとに、宿主と寄生者の相互作用において性を取り入れることの意義について議論する。