| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T11-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

餌利用と水温環境に対する外来生物の進化反応

*米倉竜次(岐阜県河川環境研究所),河村功一(三重大学生物資源学部)

外来生物は,新たな環境でも高い増殖能力を発揮し侵入先で急速な分布拡大を遂げる場合がある.その背景には,異なる選択圧に対する外来生物の迅速な進化が関与しているかもしれない.侵略性に関連する表現型が新たな選択圧に応じて進化するためには,(生存や繁殖に関連する)遺伝的変異が集団を創始する個体の中に含まれていなければならない.遺伝的変異を消失しやすい数々のイベント(遺伝的浮動等)を経験しやすい外来生物ではあるが,進化を駆動する遺伝的変異はどの程度,観察できるのだろうか.

演者らは,アイオワ州ミシシッピ川の18個体から創始された日本のブルーギル集団を対象に,量的遺伝学的アプローチ(マルコフ連鎖モンテカルロ法によるアニマルモデル等)の解析をおこなっている.量的遺伝解析とは,測定個体間の血縁関係(pedigree information)を取り込み,表現型分散に対する遺伝分散と環境分散の影響を分割することで表現型の背後にある遺伝能力を推定する手法である.

本講演では,侵略的影響に関連する量的形質(異なる水温環境に対する孵化仔魚までの生残率や異なる餌生物への選好性のどちらかを紹介する予定)に注目し,それらに関わる相加的な遺伝変異がブルーギルの集団間や集団内にどの程度含まれているのかといった点に注目する.単一起源かつ少数の創始者から派生した日本のブルーギル集団がどのような進化反応を遂げてきたのかといった点や他の場所へと拡散した場合に進化できる遺伝能力が集団間にどのように偏在しているかといった点について議論する予定である.


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