| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T11-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

スケールを変えて見た在来種の外来種への応答

千葉聡(東北大学)

外来種が及ぼす捕食圧や環境変化などのインパクトに対して在来種が示す応答は、それを観察する空間スケールや組織スケールの違いにより異なるだろう。局所集団レベルでは、外来種の影響下で生じる選択により特定の表現型の急速な進化が起こりうる。一方、メタ集団レベルでは、外来種のインパクトは特定の生息環境を占める局所集団の選択的絶滅を引き起こし、“集団のソーティング”により、メタ集団レベルの表現型ないし遺伝子型に極端な偏りをもたらすかもしれない。この場合、その効果が局所集団レベルに波及し、場合によっては、局所集団レベルで生じる表現型の進化的変化に対し拮抗的に働くなどの影響を及ぼす可能性がある。また群集レベルでは、外来種のインパクトは特定の性質をもつ種の選択的絶滅を引き起こし、集団のソーティングによる群集組成の変化をもたらすだろう。このような群集レベルの変化は、それによって生じた種間関係の変化を介して、個体レベルに波及し、特定の表現型の進化を引き起こすかもしれない。ここでは、上記のような異なるスケール間で生じる外来種の影響の相互作用の可能性を検討するため、小笠原諸島の陸生貝類がノヤギ、クマネズミ、ウズムシという外来種の影響に対して、約30年の期間に示した応答を調べた研究結果について紹介する。


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