| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T18-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

漁業におけるプール制の意義ー経済学的視点からー

松井隆宏(三重大)

本報告の目的は、資源管理の成功事例として知られる漁業におけるプール制について経済学的な視点から分析し、その意義を明らかにすることである。

水産資源の枯渇を防ぐには、公有・私有・共同管理の3つの方法が有効であることが知られるが、プール制は、この共同管理に含まれる。先行研究では、プール制の機能として、漁場の限界的利用や生産力の増大が、プール制の下でおこなわれる水揚量の調整の意義として、価格が高い日に出荷できることや総水揚量の抑制による価格の向上・資源の保護などがあげられる。一方、資源保護の観点からおこなわれる単純な総水揚量の抑制は、過剰投資や漁場利用の不均一化を引き起こすことが知られている。

また、先行研究では、プール制の成立条件として、漁場の独占的利用、価格決定力の保持、集団構成員の均質性、兼業業種の存在、リーダーの存在などがあげられている。一方、自主管理一般に関しては、より多様な漁業でおこなわれている。

これらを踏まえ、本報告では、実際のプール制の事例(駿河湾サクラエビ漁業)において水揚量の調整がいかにおこなわれているのかを明らかにし、つづいて、実際のデータから推計した価格の関数をもとに、利潤を大きくするような水揚げのあり方を明らかにする。そして、従来からの指摘や他の事例とあわせて、プール制における水揚量の調整の意義についての検討をおこなうとともに、先行研究や他の事例をもとに、漁業における自主管理の成立条件について、経済学的な視点からの統一的な解釈を与える。

プール制における水揚量の調整は、資源量に制約のない場合であっても、価格の動学的な推移を考慮した水揚げをおこなうことでその経済価値を最大化し、同時に、資源管理上の好影響という副産物をもたらすことができる。また、均質性は、プール制の成立可能性を高めるものと考えられる。


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