| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T21-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

河川生態系における保全重要地の検討

*赤坂卓美(北大),森照貴(自然共生セ),竹川有哉(徳島大),石山信雄(北大),井上幹生(愛媛大),三橋弘宗(兵庫県大),河口洋一(徳島大),鬼倉徳雄(九大),三宅洋(愛媛大),片野泉(兵庫県大),一柳英隆(九大),中村太士(北大)

河川生態系は、人類により最も改変された生態系の一つである。我が国においても、殆どの河川がダムや氾濫原の喪失など何らかの人為的影響を受けており、河川生物の種多様性保全が急務となっている。野生生物の保全を考える際、国立公園などの保護区は、本来、野生生物の生息場を保全する機能を有する重要な場所である。しかし、河川は、国立公園を設定する際にあまり考慮されてきておらず、むしろ河川自体の線的な形状から国立公園の境界として利用されることも少なくない。先の愛知ターゲットに伴い保護区の増設が求められる中、国土または地域のγ多様性を効率的に保全するためには、既存の保護区でどれくらい河川生物が守れているのか?また、新たに保護区を設定する際には、どこが優先されるのか?を明らかにしていく必要がある。

本発表では、まず、全国および地域(北海道など)の2つの空間スケールにおいて、魚類のRDB記載種を対象に相補性解析行い、種多様性を保全する際に重要な場所(保全重要地)を選定した。次に、保全重要地となる場所の特性について検討した。最後に、保全重要地と既存の保護区間でGap分析を行い、既存の保護区の果たす機能についても検証した。この結果、既存の保護区はあまり機能しておらず、むしろ保全重要地は、農地や都市などが優占する下流域に多く存在した。これらの結果は、河川生物の種多様性を保全するには、これまでのような人間活動と生物を切り離した保護区という考え方ではなく、人の生活する環境の中で、河川を利用しながら保全する新たな仕組みが求められることを示唆する。


日本生態学会