| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T23-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
外来生物によって引き起こされる様々な問題が認識されて久しい。2005年に外来生物法が施行され、この問題に対する一定の成果は得られてはいるが、多くの対策はその場所での被害軽減に留まり、外来生物個体群の根絶や新たな場所への侵入防止等積極的な解決策を取るまでには至っていない。
外来生物は生態学においても、エルトン以降主要なテーマとして位置づけられ、侵略的外来種の生物学的特性に関する研究はもちろんのこと、なぜ生物は新天地で在来生物の存続を脅かすほど、あるいは産業活動に支障を来すほど爆発的に増加するのか、どのような特性を持つ生物が侵略的外来種に成りうるかなど多岐にわたる研究が行われてきた。このような基礎的な研究は、解決策を考える際の根本であり、防除作業においては生物学的特性に関する研究成果はストレートに反映されている。
しかしながら、多くの生態学者が提唱する予防原則や早期対策は必ずしも外来種問題を扱う現場には受け入れられていない。外来種問題への最も有効な対策とされるこれらが受け入れられないのは、外来種問題に関係する人々の間で、利害を想定する地理的・時間的スケールにズレがあるためではないかと考える。生態学者は多くの場合、広範囲で長期なスケールを対象とするのに対し、防除対策の資金提供者は、より狭く短期的なスケールを対象としているように感じられる。これは、社会的な立場を考えればある意味当然のことであり、資金提供者の同意が得られるよう生態学者は粘り強くかつ分かりやすく自分の考えを説明する必要がある。また、経済活動と生態系保全は相反する場合が多く、「生態系サービスの持続的利用」を考えた場合、「どこまで生態学者の主張を通すべきか」は、今後重要なテーマとなるであろう。
講演では、外来雑草問題を通して得た関係者とのやりとりと、「それでも社会は研究者の考えを受け入れる方向に向かっている」と感じた事例を紹介したい。