| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T24-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
台湾と九州の間の約1200kmの範囲に点在する約150の島々からなる琉球列島には、両生類、純淡水性魚類や甲殻類など生活史の多くを陸水生息地に依存する非飛翔性の動物が多く生息する。こうした動物は海を越えた分散能力に乏しいため、それらの遺伝的分化は地理的分断の影響を強く受けてきたことが予想され、動物地理学の格好の研究対象となっている。近年、琉球列島産の両生類について実際に、多くの種で系統地理解析が進められており、それらの地理的分化パタンと程度がいくつかの種で明らかにされている。その結果、この地域の両生類の系統的・遺伝的多様性は、おもに形態形質にもとづく検討結果からの予想よりも、ずっと高いことが判明しつつある。まず、奄美諸島と沖縄諸島の集団間の遺伝的分化については、イシカワガエル種群、ハナサキガエル種群、オットンガエル+ホルストガエル種群、リュウキュウカジカガエル、ヒメアマガエル、イボイモリ、シリケンイモリを対象に調査が行われている。これらの調査の結果、すべての種で奄美諸島と沖縄諸島の集団間での遺伝的分化の程度が非常に大きいことが明らかになった。両諸島の集団間の推定分岐年代は後期中新世から鮮新世の間となり、地質学的証拠から想定される両諸島間の地理的分断の成立時期(更新世または完新世)よりも、かなり前から両生類の地理的分化が生じていたことが示唆されている。次いで、地形や地質学的証拠から更新世に一度海面下に完全に沈んだとされる宮古諸島のヒメアマガエルも遺伝的な独自性が高く、推定分岐年代から鮮新世には沖縄諸島の集団と分岐し、その後遺伝的独自性を蓄積してきたことが示唆され、これまでの地質学的証拠に基づく古地理仮説では説明できない結果が得られている。本発表ではこれらの琉球列島の両生類の遺伝的分化に関する最新の知見を紹介したい。