| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T25-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
大気CO2濃度の増加に伴い森林の高CO2環境への応答が注目されている。ダケカンバ・ウダイカンバ・シラカンバは日本の冷温帯林を代表するカバノキ属であり、これら先駆種の高CO2による動態変化は森林生態系に与える影響が大きい。本研究では野外条件に近い環境でCO2付加を行い、これら3種の成長および光合成応答について比較検討した。
実験は北海道大学北方生物圏フィールド科学センター札幌研究林に設置された開放系大気CO2増加装置[対照区(370-390 ppm)と高CO2区(500 ppm)の2処理区]にて行った。カバノキ属3種の2年生苗を2010年から4成長期間栽培し、成長、葉面積指数(LAI)および光合成等を調査した。栽培終了時には器官別乾重量を測定した。また、2012年に葉群光合成モデルによる一成長期間の光合成と呼吸によるCO2収支を調査した。
栽培終了時におけるシラカンバとダケカンバの地上部乾重量は高CO2によって有意に増加したが、ウダイカンバでは有意な影響はなかった。同様の傾向が葉群CO2収支にも認められた。ダケカンバとシラカンバのCO2吸収(光合成-呼吸)は高CO2区で顕著に増加したが、ウダイカンバでは光合成があまり増加せず呼吸が顕著に増加したため、CO2吸収の増加はわずかだった。高CO2によるLAIの増加は栽培初期に認められたが、林冠閉鎖後は3樹種ともあまり増加しなかった。一方、個葉の純光合成速度は3樹種とも高CO2で増加したが、ウダイカンバでは葉緑体の光合成活性の低下も見られた。以上より、同じカバノキ属でも高CO2に対する成長応答は異なる事、その原因として着葉の仕方などの形態的応答ではなく、個葉の光合成・呼吸の高CO2応答の違いが考えられる。