| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T25-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
IPCC第5次報告書に代表される近年の温暖化予測モデルでは、陸域および海洋の炭素循環による気候的フィードバックが考慮されるようになっているが、その推定には大きな不確実性が残されている。大気CO2濃度上昇に対する植生の応答は、気孔開度と光合成速度の変化によって導入されているが、それらは短時間の応答を時間的に外挿できると仮定したものである。より長い時間スケールで生じる同化産物の分配、葉面積、栄養状態の変化については観測データとプロセス理解が不十分であり、モデル間の応答感度には大きな違いがある。そのため、広域スケールを扱う温暖化研究では、複数のモデルによる推定結果を用いて相互比較を行うことで不確実性の幅を示すことが主流となっている。例えば、将来の気候予測ではCMIP、影響評価ではISI-MIP、対策評価ではGEOMIPなどの活動が実施されている。その一方で、不確実性を減少させる上で植物応答に関する基礎的な理解を深化させる必要性がますます高まっている。私達のグループでは広域スケール評価の高度化を目的としており、世界各地の文献データを収集して横断的に傾向を抽出するメタ分析と、独自の陸域生態系プロセスモデルの開発を進めてきた。メタ分析では、植生機能の代表的指標である葉面積指数(LAI)に関する文献データを収集し、気候条件や植生タイプとの関係性を解析した。モデル研究では、全球モデルを開発し上記のモデル相互比較実験に参加して、複数の温暖化シナリオに基づく予測を行い、生産量や炭素ストック変化の分布などを解析した。さらに光合成生産と分配や葉面積の長期的な応答に影響を与える窒素要因の導入を試みている。本講演では、これらの研究成果を紹介し、総合討論に向けて今後の課題を整理する。