| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-16 (Oral presentation)

海岸植物クサトベラにおける分散性果実二型の適応的意義について考える

*栄村奈緒子,上田恵介(立教大理),傳田哲郎(琉大理),永野惇(京大生態研・JSTさきがけ),本庄三恵,工藤洋(京大生態研),井鷺裕司(京大農)

分散性多型は多くの生物で知られており、分散能力と繁殖能力の形質間のトレードオフによって維持されていると考えられている。海岸植物のクサトベラScaevola taccadaには果実にコルクと果肉をもつ型(C型)と果肉のみをもつ型(NC型)の個体が集団内で存在する。コルクは水に浮き、果肉は鳥の餌となるので、C型果実は海流と鳥散布、NC型果実は鳥散布の能力をもつ。植物では同一個体内の分散性多型が広い分類群で知られているが、本種のような個体間の分散性多型はあまり知られていない。本研究ではクサトベラの二型の分散能力と繁殖能力の違いを調べることで、本種の二型が維持されている適応的意義を理解することを目的とした。二型の分散能力と繁殖能力の違いは果実の海水浮遊実験と形態計測から評価した。その結果、分散能力はC型果実が海流散布、NC型果実が鳥散布により適した形質を持つと考えられた。一方で繁殖能力はNC型の方が同じ果実サイズの場合により大きい種子サイズを持つことからより優れていると考えられた。また、分散能力の違いに関しては遺伝子流動からも評価を行った。南西諸島と小笠原諸島の集団から得られたサンプルを対象に、RAD-seqによって検出したSNPを用いてコアレセント解析を行った。その結果、遺伝子流動量はC型→C型個体間では長距離間である諸島間でより高く、NC→NC型個体間では短距離間である島内~諸島内でより高くなった。以上のことから、C型とNC型の果実において分散能力と繁殖能力の形質間にトレードオフの関係があると考えられた。さらにコアレセント解析の結果から、二型果実の分散能力の違いが遺伝子流動パターンにも違いをもたらしていることが示唆された。


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