| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-125 (Poster presentation)

繁殖期の長いカジカガエルの音声は季節変化するか

*松本翔一, 林文男(首都大・生命)

繁殖期になると、カエル類のオスは鳴き声を発し同種のメスを誘引する。この鳴き声は広告音と呼ばれ、メスを誘引するほか、オス同士が縄張りを主張する役割も兼ねている。一般にカエル類の鳴き声は体の大きさや温度、周囲の雑音などに影響を受けることが知られている。カジカガエル(Buergeria buergeri)は、日本の本州、四国、九州の河川に広く分布し、繁殖期間が4月から8月の約3ヶ月間と長期に渡る。そのため、鳴き声に影響を与える環境要因が大きく変化することが予想される。しかし、これまでの研究で繁殖期間の長い種の音声特性について追跡調査されたものは少ない。そこで本研究では、野外におけるカジカガエルの広告音の音声特性について、季節的変異に関する調査を行った。

2013年と2014年の5月から7月にかけて、浅川(東京都)と高麗川(埼玉県)の2個体群を対象として調査を行った。日没後1時間鳴き声を録音し、同時に気温と水温を測定した。それらの音声解析の結果、優位周波数、最低周波数、最高周波数、鳴き声の継続時間、およびパルス頻度(1秒間あたりのパルス数)は季節的に変化していた。これらの音声特性と気温との関係を解析すると、優位周波数、最低周波数、最高周波数、およびパルス頻度と気温との間には正の相関が認められた。一方、鳴き声の継続時間は気温との間に負の相関が認められた。今後、このような音声特性の変化がカジカガエルの繁殖行動にどのような影響を及ぼすのか、プレイバック実験等により調査する必要がある。


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