| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-126 (Poster presentation)

ミツバチコロニーにおける採餌活動の日的変化および季節的変化の解析

*吉田澪,大橋瑞江,木村敏文,岡田龍一,池野英利(兵庫県立大・環境人間)

社会性昆虫であるミツバチは、集団生活を活かした独自のエネルギー獲得・消費システムを有している。また、環境に適応しながら生活しているため、環境の変化が採餌などのコロニー維持行動に影響し、餌の獲得量、消費量も変化すると予想される。コロニーの存続に関わるエネルギー収支を知ることで、どのように環境に合わせて巣内の状態を維持しているのかというようなミツバチの社会構造が理解できると期待される。しかしエネルギー収支を推量するには、個体の行動とコロニーの状態の両方を調査しなければならない。そこで本研究は、観察巣箱を用いてミツバチコロニーにおけるエネルギー収支の季節変化を解析することを目的とした。

2013年8月から10月まで観察巣箱でミツバチを飼育し、巣箱の入口映像、外気温、巣内のCO2濃度、重量のデータを取得した。まず巣箱の入口映像から1時間ごとに5分間の採餌回数を計測し、採餌によって流入する炭素量を求め、エネルギー流入量とした。また、1分間隔で計測したCO2濃度から炭素生産量を求め、エネルギー流出量の指標とした。

エネルギーの流入には明瞭な日変化が見られ、夏では夕方、秋は昼に集中して増加した。外気温と1日の総流入量に正の相関が見られたため、外気温の経時データから、得られた回帰式を用いて長期の炭素流入量の推定に成功した。その結果、エネルギー流入量は夏から秋にかけて小さくなった。一方、CO2濃度の変化から推定されたエネルギー流出量は夏から秋にかけて大きくなった。流入量から流出量を差し引いて求められたエネルギーの蓄積量の積算曲線は、重量の変化と同様に、夏には急激に増加し、秋にかけて次第に緩やかになった。


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