| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-214 (Poster presentation)

自然分布地との比較による神奈川県金目川でのフクドジョウの生活史特性

*畠山類(建設環境研), 町田善康(美幌博物館), 北野忠(東海大・教養)

近年、神奈川県金目川では、国内では北海道のみに自然分布するフクドジョウが上流の一部に定着し、魚類群集中、優占種となっている。本研究では、亜寒帯性の本種が、環境特性の大きく異なった温帯河川の金目川に、どのような生態的変化を伴いながら定着し優先しているのかを明らかにするため、自然分布地である北海道網走川水系駒生川の個体群と生活史を比較した。

駒生川で2014年5月~8月、金目川で2014年1月~8月に採集した体長70㎜以上の雌のGSIを調べたところ、駒生川では5月に平均15.4と高値を示した後、7月の4.2まで減少した。一方、金目川では2月に平均10.3と最高値を示した後、5月に7.9、7月に3.2と、駒生川よりも早期にGSIが低値となったことから、金目川ではより早い時期に産卵すると推測された。

次に、駒生川で2014年5月~2015年1月、金目川で2013年1月~2014年1月に採集した個体の体長と生殖腺の状態を調べたところ、駒生川では7月に体長40㎜未満の小型個体が多数出現し、翌年1月には平均57.1㎜まで成長したものの、いずれの生殖腺も未発達な紐状であり外観で雌雄判別できなかった。一方、金目川では、6月に40㎜未満の個体が多数出現した後、翌年1月には駒生川よりも大きな平均86.1㎜まで達して、卵巣に卵黄球を蓄積した雌や排精可能な雄が出現した。

金目川でのフクドジョウの早期の産卵と当歳魚の速い成長は、水温が年間を通して駒生川よりも高いため、産卵適期が早期に訪れ、成長適期が長期に亘るためと考えられる。自然分布地である北海道よりも冬季の時点で大きな体サイズに到達していることは、より短期間で、あるいはより大型で産卵親魚となることを示唆しており、金目川において優占していることの要因の一つであると考えられた。


日本生態学会