| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
シンポジウム S03-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
ニホンウナギ、Anguilla japonica、は東アジアにおける重要水産資源の一つである。シラスウナギの採捕量は、現在、低水準にあり、漁業・養殖業に負の影響を与えている。シラスウナギや黄ウナギの漁業、資源管理は、国あるいは地域レベルで営まれてきたが、今後は本種の分布域全体を見通した資源管理が必要である。ここでは、本種の資源管理計画の立案に資するため、1)その生活史、2)資源の現状、3)減少原因、および、4)資源管理に関する最近の動向について概観する。
1)本種は夏の新月数日前にマリアナ諸島南西部の北赤道海流(NEC)の中で産卵する。仔魚(レプトセファルス)は、NEC、黒潮に乗って移動し、体長60mmに成長する。その後、稚魚(シラスウナギ)に変態して東アジア各国の沿岸に来遊する。黄ウナギは沿岸・内水面水域で成長して5-10年後に400-1000 mmに達して産卵に向かう。近年、産卵水域で採集された親ウナギが、海水、汽水、淡水で育った履歴を有することが明らかになった。これは沿岸及び内水面水域がウナギ資源を維持するために重要であることを示している。
2)日本におけるシラスウナギの漁獲量は、1970年代から減少傾向にある。おそらく日本と同様の減少傾向が台湾、中国、韓国でもみられるが、資源評価に係る個体数データは不足している。
3)想定される減少要因として、過剰漁獲やダム建設や沿岸域の埋め立てなどに伴う生息域の縮小などが指摘されている。また、エルニーニョの発生に伴う塩分フロントの移動や黒潮外側域における中規模渦の活動などの海洋環境の影響が関与していると考えられている。
4)資源回復の対策としては、沿岸域・河川の生息環境の保全と修復、漁獲規制、および放流による資源増殖が考えられる。これらの管理方策が着実に進められ、国際的な資源管理の枠組みが速やかに構築されることが望まれる。