| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


シンポジウム S03-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

九州におけるウナギの保全活動

望岡典隆(九州大)

ニホンウナギの減少要因として、(1)海洋環境の変動、(2)過度の漁獲、生息場所の減少と劣化、(3)地球・海洋環境変動に対する種の適応的変化 があげられている(東アジア鰻資源協議会、2012)。本種の場合は資源量が評価できないため、個別の資源回復策についてその効果を定量的に評価することは難しいが、上記の減少要因のうち、着手可能な(2)の低減をはかることが資源の回復につながることは自明である。第一に取り組むべき河川・沿岸域における漁獲抑制は鰻養殖生産量が多い県からはじまり、全国に広がりつつある。このような漁業規制に加え、生息場所の保全・再生対策の同時進行の必要性は論をまたない。

鹿児島県は、2012年10月にステークホルダーによる鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会を発足し、島嶼部を除く県内全内水面および海面において10〜12月におけるウナギ採捕禁止およびシラスウナギ採捕期間の短縮を実施するとともに、同上協議会として以下のウナギ保全活動を開始した。まず、石積護岸がコンクリート護岸に改変され、生物の生息場所が減少した汽水域に石倉カゴを設置し,ウナギとウナギの餌生物のすみか再生に取り組んだ。つぎに、かつて河川と田を連結する水路は土水路で作られ、水深や断面が多様で、水際には植物が生育し、黄ウナギをはじめ多く生物の生育場を形成していたが、現在、その多くがコンクリート水路(3面張)に改変されている。そこで、コンクリート3面張水路床の一部に蛇カゴを設置し、生物生息条件の改善を試みた。ここでは、これらの取り組みのモニタリング結果について報告する。


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