| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


シンポジウム S03-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

ウナギの消費と保全の関係

高野智沙登(パルシステム)

パルシステム生活協同組合連合会(以下パルシステム)は首都圏を中心とした1都9県10の地域生協が加盟する連合組織である。パルシステムは「心豊かなくらしと共生の社会を創ります」という理念の下、その一例として、みそづくりやこめ豚、サンゴの植樹などの取り組みを行っている。

2013年2月、ニホンウナギが環境省のレッドリストに選定されたことを受け、パルシステムでは「食べながら守る(資源・食文化・水産業)」方針を掲げた。これを掲げた今でも内部では賛否両論の声がある。それでもなお「食べない」という選択をしないのは、守るべきものの中に水産業も含まれるからだ。

生協ではうなぎを通年供給しているが、ピークは7月に集中しており、また直近2年で価格が高騰したためうなぎの消費量は半減している。金額実績としてはこれまでと大差ないが、原料価格の高騰と、製造数量の減少で生産者と工場経営はかつての状況とは変わってきている。パルシステムの年間販売計画数については、前年の販売実績やシラスウナギの漁獲状況を基に7月の価格を予測し、半期分の計画を提示している。もしここで、資源量が算出でき、漁獲制限された場合、その中で供給量を調整することは可能である。

適正な量を適正な価格で供給した上で、消費は原状を「伝える」手段のひとつとして重要であり、パルシステムでは丑の日のある7月月間で現状を伝えている。

消費者と生産者がうなぎを守る方法のひとつとして、パルシステムと大隅で大隅うなぎ資源回復協議会をつくり、支援金を集めている。2014年度の使い道としては、鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会、NPO法人の取り組みに寄付、放流事業に用いるウナギの購入費、現状を「伝える」ための学習会費用などに充てている。

パルシステムはこれからも「伝える」「知る」努力をし、研究者の方々と協力してうなぎの食文化をつないでいく社会を作っていきたい。


日本生態学会