| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) I1-10 (Oral presentation)
河川を含む淡水生態系は、グローバルスケールでの生物多様性の低下が最も進行している系であり、広域スケールでの生態系管理策の検討の必要性が高まっている。こうした現状の中、我が国の河川生態系においても、地域・国土スケールでの保護区の選定等の検討が実施され始めているが、その多くは種の「在・不在」情報に基づいている。一方「個体数」は、対象種の存続に直結する情報であるだけでなく、上位捕食者の分布や生態系機能の維持にまで波及する可能性がある。そのため、より効果的な広域スケールで保全策の検討のためには、今後は個体数の空間分布を評価する手法の開発が求められる。
河川水生生物の個体数に直接的に影響を及ぼす環境要因は、水質、水温、水深、流速といった河川内のパラメータであるが、こうした詳細な情報を広域で取得することは難しい。そこで本研究では、これら河川内の環境に影響することが予想される景観因子、地文的因子、気候因子とそれらの交互作用を代替指標とした統計モデルによって、個体数をどれだけ説明できるか検討した。2007~2014年に北海道地方の35水系で調査された約250地点の魚類データを用い、(1)各種の相対的な個体数が上記の広域スケールで取得可能なパラメータから推定可能か、(2)その結果が種の特性に応じて異なるか、を検証する。発表当日は、解析結果に基づき、今後の課題や実際の管理策への応用可能性について聴衆の方々と意見交換を行いたい。