| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-112 (Poster presentation)

エゾヤマザクラにおける繁殖量が当年枝個体群の動態に与える影響

*長谷川成明(北大・低温研)

樹木の枝系は当年枝によって構成されている。そのため樹木の枝系の発達過程は当年枝個体群の動態として捉えることができる。樹木において繁殖は重要な活動であるが、多くの樹種において繁殖は当年枝上で行われており、繁殖は当年枝個体群の動態に影響し、また逆に当年枝がどのように繁殖を行うかは個体レベルの繁殖パターンを左右する。

枝系は時に物理的な破壊や極端な気象条件などの影響によって大きな損傷を受ける。このような場合でも、新たな当年枝が発達して損傷を回復していくことが多いが、その際に当年枝の動態およびそこに生産される繁殖器官の関係はどのように変化するだろうか。本研究ではエゾヤマザクラを材料に、多雪による枝系の損傷からの回復過程における当年枝個体群の動態と繁殖の関係性について調べた。

北海道大学キャンパス内に生育するエゾヤマザクラ(Cerasus sargentii)3個体について2010年5月に枝系1本をランダムに選択し、枝系の先端から当年枝が50本以上含まれる分岐までを調査対象として設定した。それら2010年の当年枝と、以降そこから由来する当年枝を対象に、2011年から2015年にかけて追跡調査を行なった。得られたデータをもとに当年枝個体群動態を行列モデルにより解析した。調査個体は2013年春に雪害により調査個体中2個体の枝系が大きく折れる損傷を受けた。

雪害前は安定した割合で繁殖に特化した当年枝(以下繁殖枝)が多かった、雪害直後の2013年に繁殖枝が大幅に減少し維持に特化した当年枝が増加した。その翌年は逆に繁殖枝が減少し、2年後の2015年に雪害以前の状態に戻った。これらの変化について樹木の繁殖戦略の観点から考察する。


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