| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-212 (Poster presentation)

スニーカー雄はいかにして生まれるのか:Does cryptic variation induce the divergence of male-dimorphism?

*長谷和子(東大院・総合文化)

強い雄間競争が働く繁殖システムにおいて,代替戦略を用いて繁殖成功率を上げる個体,所謂スニーカー雄が現れることがある.ヒキガエル類のような実行性比が雄に偏る体外受精の種では,「雌を獲得するまでの競争」と「精子間競争」という二段階にわたる雄間競争が存在する.この時,雄は産卵に備える雌に長時間抱接するためのエネルギー投資として前肢を太くする一方,個体密度の上昇に伴い精子間競争も強まるため精子量にも投資しなければならなくなり,両者の間にトレードオフの関係が生じる.このような繁殖システム集団のスニーカー雄では,闘争・武器形質への投資を抑えた替わりにより多くの精子量を蓄えるようになる.結果としてスニーカー雄は闘争に強い雄と同等の繁殖成功率を稼ぐ事が可能となり,混合戦略に進化的安定性をもたらすと考えられる.

発表者らは,スニーカー雄がどのようなプロセスを経て戦術から戦略として集団内に固定され得るのか,雄の二型創出の進化メカニズムを調べるため,ヒキガエルの繁殖システムを2つの関数―前肢に対する投資量と雌の獲得率の関係と精子への投資量と受精率の関係―で表現するモデルを構築した.それぞれの関数はsigmoid関数あるいは指数関数で与え,遺伝的アルコリズムを用いて500世代後の表現型分布を観察した.結果,sigmoid関数と指数関数をそれぞれの関数とした場合には二型への分岐が起こったが,sigmoid関数同士あるいは指数関数同士の組合せではこの分岐は起こらなかった.

発表では,どのような条件の下で二型創出への迅速な進化が起こるのかの条件検討と関数の違いによる結果を比較する.また環境変動との相互作用など将来的なモデル発展と保全対策への応用についても議論したい.


日本生態学会