| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-218 (Poster presentation)

「RNA-Seqによる鱗食魚の利きの発現に関わる脳内遺伝子の探索

*竹内勇一(富山大・医), 北野潤(遺伝研), 石川麻乃(遺伝研), 小田洋一(名古屋大・理)

ヒトの利き手に代表される「右利き・左利き」は、魚類から哺乳類まで広い動物群で報告がある。利きは脳の出力の左右差に依ることから、右脳と左脳との間には利きに対応した様々な違いがあることが強く示唆されるが、その詳細は依然不明である。

左右性のモデルとして知られるタンガニイカ湖産鱗食魚Perissodus microlepisは、捕食行動において明確な利きを示す。鱗食魚は獲物への襲撃時に胴の屈曲という単純な運動に左右差を示すことから、右利きと左利きの制御に関わる脳神経回路は、互いに鏡像関係にあることが示唆されている。鱗食魚の右利き・左利きの構造的・機能的な左右差をもたらす分子遺伝基盤を明らかにするため、今回私たちは鱗食魚の利きの発現に関与する脳内遺伝子を同定するようRNA-Seq解析を行った。解析対象としたのは、機能的に左右差が予想された3カ所の脳領域である、運動や生命活動の中枢の「後脳」、視覚中枢の「視蓋」、記憶など高次機能を担う「終脳」のそれぞれ左脳と右脳である。得られたシーケンスデータはナイルティラピアのリファレンス遺伝子配列にマッピングされ、22238遺伝子のコンティグを決定し、脳領域ごとの遺伝子プロファイルが得られた。解析の結果、それぞれの脳領域において、利きと対応する遺伝子発現量の左右差を示す遺伝子が複数見いだされた。また、遺伝子オントロジー解析により、視蓋と後脳は遺伝子発現からみて高度に機能分化していることが示唆された。脳領域ごとに特異的な発現を示す遺伝子が働くことで、鱗食魚の利きが制御されると考えられる。


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