| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
シンポジウム S03-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
2010年に採択された愛知目標も、2020年の目標年まで残り5年となり折り返し点を迎えた。各種の行政施策や経済社会において、生物多様性の価値が認識され、意思決定に内在化される「生物多様性の主流化」をめざして始まった本シンポジウムも3回目を数えた。「配慮」から「活用」へ、をキーワードに議論を重ねてきた。
現在、わが国では、人口減少、少子高齢化、経済成長の鈍化、国家財政のひっ迫、東京一極集中、地方創生、国土強靭化、TPP対応などの社会課題がある。国際的にも、気候変動の顕在化、パリ協定に基づく二酸化炭素の排出削減、適応などの課題がある。「生物多様性の主流化」を進めていくためには、生物多様性の活用がこれらの社会課題解決に貢献できることを示していく必要がある。同時に、地域住民や民間企業になんらかのメリットをもたらすことを示していく必要がある。
これまでの議論が契機となり、平成27年度に策定された各種の政府計画には、「生態系を活用した豊かな国づくり」の考え方が盛り込まれ、一定の進捗も見られてきた。その一方で、盛り込まれた考え方を現場で具体化していくには課題も多く、地域の住民や行政関係者への普及促進、合意形成、制度面での対応、技術開発、生態系サービスの機能評価などの調査研究の発展などに取り組む必要がある。
本報告では、一連のシンポジウムのねらいを改めて確認すするとともに、これまでの生物多様性の経済社会における主流化に向けた政策動向の概観を述べ、本シンポジウムの趣旨説明とする。加えて、平成27年度までに環境省が検討してきた、生態系を活用した防災減災(Eco-DRR)の考え方と気候変動適応計画について紹介し、今後の現場での具体化に向けた課題と生態学への期待について議論したい。