| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
シンポジウム S03-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
昨年8月に閣議決定された新たな国土形成計画(全国計画)・国土利用計画(全国計画)では、自然環境が有する多様な機能を活用し持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるグリーンインフラに関する取組を推進することが盛り込まれた。グリーンインフラの取組は欧米で先行してきたが、我が国における国土管理・国土利用を巡っては、①本格的な人口減少社会を迎えた今、管理水準の低下が懸念される国土を適切に管理し荒廃を防ぎ、②地域が持続可能で豊かな国土を形成する国土利用を目指しつつ自然環境の保全・再生・活用を進め、③災害リスクに対する安全・安心を実現する土地利用の推進等を図ることが求められている。その対応の一つの方向性が、国土の選択的利用・複合的利用の検討である。複合的な効果をもたらす施策を積極的に進め、国土に多面的な機能を発揮させることで土地の利用価値を高め、人口減少下でも国土を適切に管理することが必要である。また、開発圧力低下の機会を捉え、管理コストを低減させる工夫とともに、森林など新たな生産の場としての活用や、過去に損なわれた自然環境の再生など新たな用途を地域の状況に応じて選択し、むしろ国民にとってプラスに働くような最適な国土利用を推進することが重要となる。グリーンインフラの考え方や施策は、その手法として有用であると考えられる。技術的要素など参考になる事例はすでに国内にも様々な形で見出すことができ、課題への対処だけでなく、新たな社会的・経済的効果も生む方向で考えることが重要である。国内外での事例等の紹介も通じて、自然環境が有する多様な機能(生態系サービス)を、「保全」や「配慮」ではなく「活用」するという新しい方向性を、今後の国土管理にどのように取り入れうるかについて考えたい。