| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


シンポジウム S04-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

種特異的プライマーセットとリアルタイムPCRによる魚類の分布推定

山中裕樹(龍谷大・理工),櫻井翔,本澤大生,本郷真理,辻冴月(龍谷大・院・理工)

環境DNA分析による生物モニタリング手法には、主に種特異的な検出と網羅的な検出の2つの区分がある。いずれの場合でも試料は現場で採取してきた水だけであるという共通点はあるものの、その分析方法で様々な応用が可能である。本講演では特定種のDNAに着目して、主にリアルタイムPCRを利用して解析される種特異的な検出系とその研究例を紹介し、その利点と利用上の注意点について解説する。

リアルタイムPCRは原理的には1コピーの対象DNAを検出可能であり、対象種のDNAが有ったか無かったかという分析結果に基づく分布の推定は環境DNA分析の適用例として最も多い。その一方で生物量の定量という試みもなされており、水槽や実験池の規模ではあるものの、リアルタイムPCRによって測定した環境DNA濃度の値から生物量の推定が可能であることが数種の生物で報告されている。こうしたDNAの定量が可能な点も、リアルタイムPCRによる種特異的な検出系の強みである。

対象種に由来するDNAの有無の判断とその定量が可能なリアルタイムPCRであるが、その精度には分析対象となる水試料の保存状態が大きく影響することが明らかになってきた。種や水質によって異なるが、環境DNAはおおよそ60-90%/日ほどの速さで分解することが知られており、水試料を採取後、できる限り早く適切に保存せねばならない。これまでの研究から、水試料を冷やしての輸送や、現場で濾過して得たフィルター試料の氷冷での輸送も、完全にDNAの分解を止めるには至らない場合のあることが明らかとなり、理想的には現地での即時の濾過、およびフィルター試料の冷凍が必要であることが示された。こうした、リアルタイムPCRでの測定に基づいた定量系を用いる際の注意点についても解説する。


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