| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


シンポジウム S04-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

魚類の環境DNAメタバーコーディング:データ主導型・発見探索型アプローチがもたらす新たな展開

宮正樹(千葉県立中央博物館)

ある水域の魚類群集の構成を明らかにするには,潜水観察をしたり漁具を使って魚を捕るなど,多大な労力と費用がかかるうえに長期間の調査が必要となる.さらに,日本産魚類だけでも4,000種以上いるため,魚種の同定を行うためには高度に専門的な知識と経験が必要となる.Miya et al. (2015) が開発した魚類メタバーコーディングの手法は,これまで魚類群集調査の足かせとなってきたこれらの障害を乗り越える画期的な手法である.とくに,魚の体表の粘液や糞などとともに水中に放出されたDNA (環境DNA) を利用することで,水をくむだけで生息する魚種の概要を知ることができるようになったのは大きな成果であろう.環境DNAを用いた本手法は,①採水;②ろ過;③ろ紙上からのDNA抽出;④ユニバーサルプライマーMiFishによる超可変領域 (ミトコンドリアの12S遺伝子の断片約170bp) の増幅;⑤増幅産物に対するアダプターとインデクス配列の付加;⑥イルミナ社MiSeqによる超並列シークエンシング;⑦データ処理・解析からなる.データの規模は膨大なもので,1回のランで1000を越すライブラリ (=サンプル) を扱うことができ,リード数にして1500〜2000万ものビッグデータが一昼夜のランで産出される.この大量データは一次処理を経た後に,リファレンス配列と比較することにより魚種の判別に用いられる.また,サンプリングから実験までは数日間で終わり,コンピュータ解析も数時間で終わる.本講演では,魚類環境DNAメタバーコーディングの概要について解説すると共に,仮説演繹型研究とは大きく異なるビッグデータを用いたデータ駆動型・発見探索型研究が今後どのような展開をもたらすのか論じる.


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