| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | 日本生態学会第63回大会(2016年3月,仙台) 講演要旨


日本生態学会奨励賞(鈴木賞)受賞記念講演 2

異性獲得のための多様な手段とツバメの地域差形成

長谷川 克(総合研究大学院大学先導科学研究科)

 性選択は生存上の利益からは説明がつかない多様な形質進化をもたらす。現在まで、理論研究によって様々な性選択メカニズムが提唱され、実証研究によって裏打ちされてきた。しかしながら、実際のところ、性選択が自然個体群でどのように働き、どのような帰結をもたらすのかは未だによくわかっていない。例えば、複数の装飾や性的形質がどのように機能し維持されているのか、個体群間でみられる性選択の違いがなぜ引き起こされるのか、どうして派手な形質ばかりが性選択で有利になるのか、といった単純な疑問も解消されていない。本研究では自然個体群を丹念に調べ、これらの疑問を解消した。調査対象種のツバメは性選択が長年研究されてきたいわゆる「モデル種」であるが、日本の屋外個体群で実際に調べて明らかになったツバメ像は文献に登場するツバメとは似ても似つかないものだった。発表ではまずこの違いを明示し、その違いがなぜ生じるか、またこのことが本種の進化とその解釈に与える影響について紹介する。また、これまで全く注目を集めてこなかった「雛擬態」という現象とその性選択上の重要性にも着目する。

日本生態学会