| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-A-004  (Poster presentation)

殻が退化したカタツムリの戦略

*秋山佳央(東北大・生命科学), 内田翔太(東北大・生命科学), 和田慎一郎(森林総研), 千葉聡(東北大・生命科学)

貝類は、形態の多様さから進化生物学的な研究のモデルとして多く扱われている。特に、「ナメクジ化」と呼ばれる殻の退化・消失は貝類の多様化を引き起こす重要な進化的イベントであるとして着目されてきた。
本研究ではこの「ナメクジ化」の途中であると考えられる種を含む小笠原諸島固有のオカモノアラガイ類(オガサワラオカモノアラガイ、テンスジオカモノアラガイ)を用いて、ナメクジ化が引き起こされる要因の解明を試みた。ここでは、仮説としてニッチ分化が殻の消失を促していると考え、検証を行った。
手法として、まず2種の系統関係を調べるため分子系統解析を行った。ニッチ分化を調べるための調査はラインセンサス方式で行った。小笠原諸島の母島にある乳房山の標高300m以上の遊歩道沿いで70地点をとり、1地点あたり10分間で、見つけた種、活動の有無、付着していた植物種を記録した。また地点ごとにツルアダンの密度をランク付けした。得られたデータは一般線形混合モデル(GLMM)で解析を行った。
結果、この2種は姉妹種であるが、種間競争による互いの排除力は弱いことがわかった。以上のことから、生存戦略の違いがニッチ分化を引き起こし、形態の変化が促された可能性が示唆された。


日本生態学会