| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-A-005  (Poster presentation)

表現型可塑と系統進化:食性の異なるオタマジャクシの腸の形態形成と変態

*岸本渓, 林文男(首都大学東京)

カエルはオタマジャクシから変態する際に、外見だけでなく、内部器官も大きく変化させる。腸についても、幼生型の腸から成体型の腸へと再構築される。これは変態に伴い変化する食性(一般的には幼生の植物食から変態後の動物食)への対応だと考えられる。雑食性であるヤマアカガエルの幼生に、動物質の餌のみ、あるいは植物質の餌のみを与えて飼育すると、同じ卵塊に由来する個体にもかかわらず、幼生の腸の形態は大きな表現型可塑性を示した(日本進化学会第18回大会)。そこで今回は、幼生の食性が異なるアオガエル科の2種、アイフィンガーガエル(幼生は卵専食)とモリアオガエル(幼生は植物食)の間で、腸の発育過程がどのように異なるかを比較した。幼生の発生段階ごとに、腸の長さ、太さ、腸壁の厚さを比較するとともに、幼生型の腸から成体型の腸が再構築されるタイミングについての比較も行った。再構築のタイミングを知るために、発生段階ごとに腸の切片を作成し、アポトーシスの有無、甲状腺ホルモン受容体Thrβの発現の有無、さらに変態最盛期での細胞増殖因子の発現の有無を調べた。その結果、動物質の餌である卵を専食するアイフィンガーガエルの幼生では、植物食のモリアオガエルの幼生に比べ、腸が短く、太く、腸壁が厚く、成体型への腸の再構築が発生のより進んだ段階ですみやかに行われることが明らかとなった。アイフィンガーガエルの幼生のこうした腸の形態形成は、雑食性のヤマアカガエルの幼生を動物質の餌で飼育したときに観察される腸の表現型可塑性と同じ傾向を示すため、動物食への適応的応答であると考えられた。つまり、カエル類の幼生の腸の形態に関して、雑食性種と特殊な食性をもつ種に共通の進化的背景として、食性と関連した表現型可塑性の振幅が関わっていると推測される。


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