| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-247  (Poster presentation)

渓畔林の林床植生に及ぼす渓畔撹乱の影響

*伊藤菜美(新潟大学)

渓畔域では、数十年、数年単位で発生する大規模な土石流攪乱や、季節的な増水による高頻度・低規模な河川攪乱など、頻度・サイズ・強度の異なる多様な攪乱体制がみられる。特に、土石流など大規模攪乱跡地では、渓畔林の林冠構造が、先駆的な樹種であるヤナギ類・ケヤマハンノキから、遷移後期種であるカツラ・サワグルミへと遷移していくことが示唆されている。渓畔林の樹木の遷移や生態的特性の解明を目的とした研究はなされてきたが、林床植生の動態は明らかにされていない。本研究では、遷移段階の異なる林分で林床植生の種組成を比較し、渓流攪乱が林床植生の種組成に与える影響と遷移の段階を検討した。

調査地は佐渡島岩谷口に位置する大河内沢の標高約400-450mの渓畔域である。調査地の渓流は2つの支流に分かれており、十数年前に土石流が発生した渓流と、土石流が数十年発生していない安定した渓流である。現在、土石流によって形成された堆積地にはオノエヤナギとケヤマハンノキの若齢な林分が成立し、土石流が発生していない渓流では,サワグルミとカツラの大径木が高齢な林分を形成している。両林分において、攪乱頻度や強度が異なる立地で植生調査を行った。

若齢林と高齢林の両林分において、増水による小規模・高頻度な攪乱を受けている流路に近い場所では、一年生草本のミゾソバやキツリフネなど、共通した植生がみられた。一方、若齢林の土石流後に安定した堆積地ではアカソやスギナが優占し、高齢林ではシダ植物やミヤマイラクサ、ズダヤクシュなどが優占しており、両林分で種組成に違いがみられた。よって渓畔林では、小規模・高頻度な攪乱を受け続けている場所では大規模攪乱後の遷移初期の植生が維持され、安定した時間が経過している場所では、大規模撹乱後の時間経過に伴って林床植生も遷移していることが示唆された。


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