| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-M-363  (Poster presentation)

表参道・原宿地域の屋上緑化地および周辺市街地におけるチョウ類の移動・生息環境の評価

*野口祐輝(東京都市大学), 杉本勇介(東京都市大学), 三瓶徳孝(株式会社 東急不動産次世代技術センター), 川崎鉄平(株式会社 石勝エクステリア), 横田樹広(東京都市大学)

 都市における生態系ネットワークの形成にあたっては、屋上緑化地や市街地の緑を含めた緑地のネットワークが生物によりどのように利用されているかを検証し、生態系ネットワークとして機能する緑の配置・構成のあり方を評価することが重要である。とりわけ市街化の進んだ都心部の市街地では、小規模な緑地における質の効果とつながりの効果との関係性を評価することが必要である。本研究では、都心部の大規模緑地である明治神宮に近い表参道・原宿地域において、複数の屋上緑化地とその周辺市街地を対象として、チョウ類の生息状況と水平・垂直方向の緑地の配置・構成との関係について把握することを目的とした。屋上緑化地4地点(「東急プラザ原宿おもはらの森」「キュープラザHARAJUKU」「渋谷区立神宮前小学校」「新青山東急ビル」)での定点調査と、周辺市街地内でのラインセンサス(それぞれ年間計14回)により、屋上緑化地周辺におけるチョウ類移動経路・生息地点を把握した。そのうえで、航空機レーザー測量によるDSM(Digital Surface Model)データと高解像度衛星データ(WorldView-3)を用いて、チョウ類の移動・分布と緑地の立体的な配置との関係性を把握した。定点調査(計13種142個体を確認)によるチョウの移動経路と緑地高さとの関係性を把握した結果、屋上緑化地と地上並木の樹冠レベルが連続する環境で移動環境が形成されていた。一方、ラインセンサス(計24種617個体を確認)では、特に移動能力の高いチョウ類は必ずしも並木や街路沿いに依存せず、その後背部との横断的な環境利用がされており、街路と接道緑地が連続しながらモザイク状に配置された青山北町アパートで種数・個体数共に突出して多かった。屋上緑化地においても、街路樹冠との連続性に加え、一体的に利用できる立地での生息資源の創出が重要と示唆された。


日本生態学会