| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-037  (Poster presentation)

共生者選択は相利共生系の多様性を促進するか?

*江副日出夫(大阪府立大学)

相利共生系において、自分により利益をもたらす相手と優先的に共生関係を結ぶパートナー選択は、寄生的個体を排除することによって系を維持する重要なメカニズムの一つと考えられている。それに対してBever(1999)は、宿主および共生者が複数系統の場合、宿主-共生者の正の相互作用が強いほど系の多様性が保たれにくいということを簡単な数理モデルで示した。その場合、相利共生系においては、相利共生関係が深化するほど、系全体の多様性が減少することになってしまう。
そこで本研究では、マメー根粒菌系を元にした2宿主系統ー2共生者系統の相利共生系に関する数理モデルを立てて、宿主によるパートナー選択の強さと系の動態の関係を調べた。共生者1, 2はそれぞれ宿主1, 2に対しては相利的だが、もう片方の宿主に対しては寄生的であるとする。宿主は環境中から共生者を選んで資源を渡すが、パートナー選択の強さが強いほど自分に対して寄生的な共生者に渡す資源が少ないとする。相利的共生者は受け取った資源の一部を割いて生産した有用物を宿主に渡すが、寄生的共生者は資源をすべて自分の増殖に用いる。
解析の結果、共生者選択が強くなると4種安定共存解が消えるが、さらに共生者選択が強くなると安定共存解が復活する場合があることがわかった。このことは、相利共生関係が進んでパートナー選択が強い場合でも、相利共生系の多様性が維持される可能性を示している。


日本生態学会