| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-038  (Poster presentation)

静岡県中西部の半自然草地における草本植物のメタ群集構造

*丹野夕輝, 山下雅幸, 澤田均(静岡大学大学院総合科学技術研究科)

 環境条件と空間的なプロセス(例えば種子散布)はどちらもメタ群集の構造を決定する要因と考えられている。しかし、両者の影響を、日本の半自然草地の植物群集において調査した研究は少ない。そこで本研究では、静岡県中西部の茶草場(茶園の敷草を刈るための半自然草地)を対象に、環境条件と種組成との関係および種組成の空間パターンを解析した。
 静岡県菊川市および島田市の茶草場15カ所で、2012年7月から2013年6月に調査を行った。各茶草場にコドラート(2.25 m2)を2~12個ずつ設置し、コドラート内に出現した植物、開空率および土壌条件を記録した。出現頻度の高かった種の分布を解析するため、階層ベイズモデルを作成した。このモデルでは、茶草場およびコドラートの2つの空間スケールを考慮した。茶草場レベルでは、耕作履歴と空間ランダム効果を想定した。空間ランダム効果の相関の強さは、茶草場間の距離が増加すると指数関数的に減少すると仮定した。コドラートレベルでは、コドラートの環境条件による影響を想定した。
 解析した19種のうち、3種の出現確率は耕作履歴のない茶草場で高く、6種は耕作履歴のある茶草場で高かった。空間ランダム効果の相関が0~500 mの範囲で大きく減少したことから、種子散布のような空間的なプロセスの範囲は概して500 m以内であることが示唆された。土壌条件は、茶草場間、茶草場内のコドラート間で異なった。硝酸態窒素含量と7種の植物の出現確率の間には負の関係があった。カルシウム含量との間に正の関係が認められた植物は8種、負の関係が認められたのは1種であった。このように土壌条件に応じた種選別の存在が示唆された。以上の結果から、茶草場の耕作履歴、茶草場間の空間的なプロセスおよび環境条件の不均一性がメタ群集の構造に影響していると考えられた。


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