| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-041  (Poster presentation)

林冠下のササを完全に衰退させるには抑制後何年かかるのか?

*齋藤智之(森林総研東北), 酒井武(森林総研), 星野大介(森林総研), 九島宏道(森林総研多摩), 杉田久志(元森林総研)

 ササが分布する地域では、人工林か天然林かに関わらず林冠下でも伐採地でも、ササが繁茂することによって更新木や植栽木を被圧し、成長を阻害することが知られている。また、ササは、樹木だけでなく低木や草本植物をも被圧し、多様性を低下させ、単一植生にする場合がある。したがって、初期保育においてササの抑制は必要不可欠である。しかし、前述のとおり、ササの抑制は様々な場所で必要とされ、抑制方法を目的に合わせて使い分けるべきだと思うが、そのような試験はあまり多くない。また、林冠下であれば伐採地に比べ、ササの量が多くはなく、反応が異なり、効果が出やすいのではないかと考えられる。本研究では刈払い、薬剤散布、とこれらの組み合わせ処理を行ったササの抑制試験による結果を報告する。薬剤はササの新稈の伸長成長を抑制するフレノックを用い、ササを枯殺せずに徐々に効果を示し、何年かの後には回復する。
 実験は2012年に開始し、刈払いのみの処理は連年で行い、刈払う時期の違いも組み込んだ。2016年は処理後4年が経過したが、刈払いを含む3処理は最初に刈り払った効果が大きく、翌年の発稈数は少なかった。刈払いのみの場合、連年で3年は実施する必要がありそうだった。また、フレノックのみの処理は3年目にしてようやく刈払いに近い地上部現存量に低下したが、既に当年稈の発生数が増加し、回復し始めている。結果的に、林冠層の密度にも因るが、抑制処理の組合せによって更新面の明るさをいろいろコントロールできる見込みがでてきた。


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