| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-042  (Poster presentation)

北限メヒルギ群落における2016年寒波の影響

*川西基博, 大戸優也(鹿児島大・教育)

鹿児島県喜入生見地区のメヒルギ群落はマングローブの北限に当たるとされ、特別天然記念物に指定されている。2016年の1月の寒波の影響で九州では記録的な大雪となり、鹿児島市喜入地区の最低気温は-6.3℃を記録した。この寒波の影響でメヒルギ群落のほとんどの個体の葉が黒変し大きく影響を受けたことが見て取れたことから、寒波による被害を把握し個体群の更新について考察した。喜入生見地区のメヒルギ個体群は、南北の二つのパッチに分かれており、個体サイズ構成と健全度が異なっている。2015年の毎木調査(樹高1.5m以上)では北区(北側のパッチ)では平均DBH約3㎝、樹高約2.5mで個体密度が大きかったのに対し、南区(南側のパッチ)では平均DBH約4㎝、樹高約3mで比較的個体密度が小さかった。北区の健全度が低く、枝先や主幹が枯れた幹が3割程度みられたが、南区ではそのような個体はほとんどなかった。寒波による被害状況を把握するために、積雪後にあって新芽が伸長し始める前の時期にあたる2016年4月に葉の状態の調査を行った結果、79%の個体が全ての葉が枯れ落ちており、半分以上の葉が枯れ落ちた個体と合わせると、92%に達した。葉が残存していた個体は南区の一部の地域に集中していた。2016年11月時点での全体の枯死率は25.4%であった。直径階ごとに健全度の変化をみると、DBH1cm未満の個体の枯死率は約50%に達しており、DBHの大きな個体ほど枯死率は小さくなる傾向があった。また、稚樹の被害状況を明らかにするために各調査区に1m四方の調査区を設けて毎木調査(樹高1.5m未満)を行った。4月の時点では北区では全て、南区では約7割の稚樹の葉が全て枯れ落ちていた。11月時点での稚樹の枯死率は北区で約75%、南区で約48%であった。樹高が90.0cm未満の稚樹において枯死率が高かった。


日本生態学会