| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-C-128  (Poster presentation)

トノサマガエルとナゴヤダルマガエルの野外個体群における繁殖実態と種間相互作用

*中西康介(琵琶湖博物館, 滋賀県大・環境), 古川真莉子(滋賀県大・環境), 高倉耕一(滋賀県大・環境), 西田隆義(滋賀県大・環境)

同属近縁種であるトノサマガエル(Pelophylax nigromaculatus)とナゴヤダルマガエル(P. porosus brevipodus)は地理的分布、繁殖場所・期間が重なる。両種間にはコーリングの同調性や異種間包接が観察されており、雑種も生じる。しかし、野外での繁殖干渉の実態はほとんどわかっていない。そこで、両種が同所的に分布する地域において、水田を単位とした空間スケールで、両種の繁殖フェノロジーおよび繁殖成功におよぼす種間相互作用について検討した。
両種の繁殖期である4月~7月にかけて、滋賀県米原市に位置する水田8筆(休耕田を含む)において、夜間に両種のオスのコーリングを聞き取ることで、繁殖個体数の季節的・時間的変化を調査した。また、各水田で幼生を採集し、核DNAマーカーを用い種同定し、両種の繁殖成功率を評価するとともに、雑種および浸透交雑の検証を行なった。
調査期間中、継続してダルマがコーリングしていたのに対し、トノサマのコーリングは4月下旬から5月下旬までであった。両種が混生していた水田において、両種のコーリング個体数のピークは重なっていた。幼生が採集された6筆の水田のうち、4筆の水田ではトノサマがコーリングしていたにもかかわらず、幼生は純粋なダルマのみであった。一方、トノサマ幼生が検出された2筆の水田は、トノサマのコーリング個体数の割合が大きい場所であった。この2筆では、純粋なダルマ幼生とともに雑種および浸透交雑が疑われる個体も検出されたが、ごく少数であった。以上のことから、トノサマとダルマは基本的に水田単位で異所的に繁殖をしている可能性が考えられた。しかし、そのすみ分けは完全ではなく、他種の相対頻度に応じて雑種形成あるいは卵の発生異常をともなう繁殖干渉が生じていることが予想された。


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