| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T03-4 (Lecture in Workshop)
人間による土地利用様式の変遷によって、森林景観は大きく変化している。特に日本列島では、過去に人工林造成に伴う自然林の断片化が大きく進行し、また今後、耕作放棄地の増加なども見込まれている。このような変化しつつある森林景観の中で、動物群集がどのように応答し、また彼らによる種子散布サービスがどのように行われているかを解明することが、現在そして将来の森林生態系の保全上、不可欠である。GISによる景観構造分析は、この問題にアプローチするうえで定石であり前提となっているが、これを基盤としてさらなる研究が進められている。
本講演ではまず、人工林による断片化が進行した北茨城市周辺の広葉樹林における果実食鳥の種数・個体数の応答について分析した研究を紹介したい。この研究では、果実食鳥群集に対する景観構造・林分構造・局所果実資源量の相対的な重要性を評価した。その結果、果実食鳥の種数・個体数に影響する要因が、季節的に大きく変化することが示唆された。
これに加え、種子散布サービスの空間的な変動に関わる最新の研究をレヴューし、今後の研究の展望について考えたい。特に動物側のresource trackingや fruit satiationなど、動物散布システムに特有の現象を切り口として、種子散布の空間的変異に関するフレームと今後の研究の方向性を考えたい。また動物による長距離散布の評価についても展望を伝える。