| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T05-2 (Lecture in Workshop)
近年、地球温暖化による深刻な影響を回避するために、温室効果ガス排出の削減(緩和策)や、温暖化影響に対して柔軟に対応可能な社会の構築(適応策)、といった対策を行うことが急務となっている。温室効果ガスの排出量を大幅に削減する積極的な緩和策を行うには、バイオマスエネルギーの利用や、大規模植林が必要不可欠となる。これらの技術は、土地利用の大規模な改変を伴うことから、他の土地利用との競合や、生物多様性への影響が生じることが懸念される。つまり、積極的な緩和策を採用し温暖化を抑制した場合と、緩和策をほとんどとらずに温暖化が進行した場合では、それぞれ生物多様性への影響は異なると考えられる。
本研究では、将来の気候変動の影響や、緩和策に伴う土地利用の違いが全球スケールで生物の絶滅リスクに及ぼす影響を評価することを目的とした。まず、哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・植物の5つの分類群にまたがる約9,800種について、GBIFに登録された在データを用いてMaxentによる種分布モデルを構築し、構築したモデルを2070年の気候シナリオおよび土地利用シナリオに投影することにより、将来の潜在分布面積をシナリオごとに推定した。推定は、生物が環境変動に対して全く移動できない場合(No Migration)と、完全に移動可能な場合(Full Migration)、生物種ごとの移動分散能力を考慮した場合(Partial Migration)の3つのケースを想定して行った。さらに、現在から将来への潜在分布面積の変化からシナリオごとに各生物種の絶滅リスクの推計を行った。その結果、種による差が大きいものの、全体的に土地利用変化による影響よりも気候変動の影響のほうが大きい傾向が確認された。なお、森林性鳥類については、より詳細なデータを用いた絶滅リスクの推計手法も別途開発中であり、今回の発表ではこちらについても紹介したい。